葬儀のナレーションは、混沌とした感情をことばに表す3分間
マイクナレーションが本当に好き
皆様こんにちは。かなふく鈴木です
ぼくは、2024年2月に『葬儀屋さんの司会。どうしてナレーションをするのかお話しします。』という記事を書いていますが、それでもまだまだ語り足りない。
ということでこの記事では、葬儀司会によるマイクナレーションの世界を、さらに深く掘り下げてみたいと思います
どうして虹の色は国によって違うのか
いきなりですが、聖書にこんな一節があります。
”はじめに言葉ありき。
言葉は神と共にあり、言葉は神であった。
言葉は神と共にあった。
万物は言葉によって成り、
言葉によらず成ったものはひとつもなかった。”
ぼくはキリスト教徒でも、欧米人でもないので、この一節が本当に意味するところを理解できているかどうかは、分かりません
でも、「ことばがあることで世界が成り立つ」という感覚はよく分かります。
もっとも分かりやすい例が、虹の色です。
ぼくたち日本人は、虹の色と言えば、「7色!」と思いがちです
しかし、世界を広く見渡してみると、アメリカやイギリスは6色、ドイツやフランスや中国は5色、ロシアやインドネシアは4色なんだそうです。
さらには、2色の国もあれば、8色の国もあるのだとか
「国によって視力がちがうの?」
「空にかかる虹って、国によってちがうの?」
…なんて思いがちですが、きっとそんなことはないですよね
これはきっと色を指し示す「ことば」が違うのだと思うんです。
日本の虹は「 赤 ・ 橙 ・ 黄 ・ 緑 ・ 青 ・ 藍 ・ 紫」です。
これがアメリカになると「赤 ・ 橙 ・ 黄 ・ 緑 ・ 青 ・ 紫 」の6色になります。
虹は実際には、色と色の境目が実に曖昧です。いわゆるグラデーション。日本には色の濃さによって、「青」と「藍」という異なる言語表現がありますが、これが英語だときっと「blue」の一語でまとめられるのでしょう。
つまり、はじめに7色を指し示すことばがあるから虹は7色に見える、これこそ「はじめに言葉ありき」の好例だと思っています
※ちなみに、国による虹の色のちがいは、こちらのサイトを参考にしました。
はじめに言葉ありき
「はじめに言葉ありき」という考え方は、はらだメンタルクリニックさんのこちらのブログで実に分かりやすく書かれていて、この一文こそが、葬儀のナレーションの重要さを物語っているなあと思います。
”心理療法は、混とんとした「感情(無意識)」を「言葉(意識)」で表現する訓練だといえるかも知れません。”
「混とんとした感情を言葉で表現する」ことが、心理的な安定につながる。まさにお葬式のナレーションが目指すところです
お葬式で重要なことばにお坊さんの読経があります。読経って、とてもおごそかで、重々しくて、きっととてもありがたいものだと思うのですが、同時に、とってもむずかしくて、正直何を語っているのか、だれも分かりませんよね
もちろん、大切な方をあの世に送り出すわけですから、おごそかで、重々しくて、ぼくたち凡人が簡単には理解できないむずかしさにこそ、意味があるのかもしれません。
そこで考えられるのが「緊張と緩和」理論です。前のブログで、さまざまな緊張と緩和のくり返しが癒しをもたらすと書きましたが、お坊さんによる伝統的な儀式は、まさにこの「緊張」の部分を担ってくれています
じゃあ、「緩和は?」となると、これこそが司会者によるマイクナレーションだと思うんです。
お坊さんの読経は、何を言っているのかよく分からないけれど、そのことばは仏さまの世界に通じている。であるならば、その逆を補うために、ぼくのマイクナレーションは、だれもが分かることばで、ご遺族に寄り添うことに注力しています
ご逝去の直後って、いろんな感情が混とんとして、状況を整理できないものです。だからこそ、それをことばに置き換えることで、自分を少しずつ取り戻せていけるのではと思います。
はらだメンタルクリニックさんのブログは、次のように続きます。
”「言葉」にするから、人に伝えることができて、共有することができます。混とんとした「こころ」を「言葉」で表現して、周りにいる大切な人たちに伝えて、本当の自分を受け入れてもらえた時に「癒し」が得られるのだと思います。”
ぼくのナレーションは、必ずご遺族さまへの「寄り添い」を意識しています。共有、受け入れ、そして癒し、これこそが、お葬式におけるマイクナレーションの役割だと言えるでしょう。
原田院長、マジリスペクト
ぼくのナレーションの作り方
マイクナレーションは、台本が命です
では、その台本をどうやって作るのかというと、「ご遺族の声に耳を傾ける」、ただこれだけです
病院にお迎えに上がった時、故人さまのお身体をお手当している時、打合せをしている時、さまざまな場面で、故人さまの生前のお姿や思い出を聴かせていただいています。
現実を受け止められない方、ご逝去に安堵する方、話しながら泣きだしちゃう方、うまくことばにできない方、反応は、本当にさまざまです。
でも、そこで話していただいたことばの一つひとつ、生前の思い出の一つひとつをぼくなりにしっかり汲み取って、言語化しています。
ぼくに話をして下さっている時、多くの方は感情が先走ってしまって、脈絡のないことも少なくありません。
その感情に、第三者のぼくが耳を傾ける。そしてことばに置き換えて、それをお葬式の儀式の中で読み上げる。こうした一連のことばの営みを通じて、自分の感情を整理でき、意識が故人さまにスーっと向かうのではないかと感じています。
胸の内の感情を気持ちよく吐き出して、ぼくのナレーションを違和感なく聴いてもらうには、「ラポール」つまりお互いの信頼関係がものすごく重要です
ラポールは、耳を傾けることで築かれます。ぼくは、いただいたことばをもとに台本を作り、ナレーションを通じて意識のすべてを故人さまに注いでもらいます。マイクナレーションとはまさに、ご遺族を故人さまのもとまでいざなうための乗り物なんです。
だからこそ、葬儀社として、ことばの重要性をひしひしと感じています。混とんとした感情だって、ことばにすることで、自分の中で整理でき、まわりと共有でき、それが癒しにつながるからです
本日も最後までお読み頂き誠にありがとうございました
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葬儀のかなふく 株式会社神奈川福祉葬祭
代表取締役 鈴木隆