離れたいお寺、引っ付きたいお寺
皆様こんにちは。かなふく鈴木です
仕事柄、いろんなお坊さんとのご縁があります。近年「寺離れ」ということばをあちこちで耳にしますが、「たしかにこんなお坊さんだったら、みんな離れていくよな〜」と思ってしまうこともたくさんあります
一方で、「こんなにすばらしいお坊さんだから、ここだと寺離れがないんだな」というようなこともあります
ということで、今日は「離れたいお寺、引っ付きたいお寺」と題して、ブログを綴ってみようと思います。
離れたいお寺
つい先日お葬式を終えたAさん。奥様を亡くされて、子どももいない。親戚もごくわずかということもあり、一日葬を希望されました。
そして、葬儀のスタイルをある程度固めたところで、お寺に連絡を取られました。Aさんはお寺の役員まで務められたお方。歴代のご先祖さまもお寺に多大な貢献をしていたことからいい戒名をもらっていたそうなのですが、Aさんは「今回は小さなお葬式でいいし、戒名も普通のでいいよ」とおっしゃってました。
そんなAさんとお寺との間で、食い違いがあったのです。なんでもそのお寺は住職が不在になってしまっていて、近くのお寺の住職が代理としてやってこられたのです。
Aさん「うちは家族がいない。親戚もみんな高齢者。だから一日葬でしたいです」
住職「役員まで務められたというのに、一日葬でいいのですか?きちんと2日しましょうよ」
ん??? 役員を務めたことでどうして葬儀の日数を2日にしないといけないのか。しかもこちらの話を聞くと、ムッとした顔をする。「いやなお坊さんだなあ」と思いつつ、Aさんは話を進めます。
Aさん「お金もないので、妻の戒名は信女でお願いします」
住職「いやいやいや。ご先祖さまはみんな院号がついていますよ」
Aさん「でも、お金もないし、あとも絶えますから、信女でいいです」
住職「お寺の中で前例ができちゃうと困ってしまう。なんとかなりませんか」
ここまで話をして、いよいよ堪忍袋の緒が切れたAさん。「じゃあもういい。お経もいらない。お寺のお墓も、墓じまいします 」
このように言われて、ようやくお坊さんはことの重大さに気づいたのか、Aさんのことばに耳を傾けだしたのだそうです
一日葬なのに「お布施を2日分ほしい」とか、「返礼品も2つほしい」などと言ってしまうお坊さんらしく、いやはや、そういう方って本当におられるんですね・・・
引っ付きたいお寺
もちろんこうした方ばかりではありません。中には、すばらしい人柄のお坊さんだっておられます
そのお坊さんは本当にすばらしい。いつもにこにこ。挨拶もおだやか。ご葬家に話しかける姿もほがらかで、こちらの心を和ませてくれるような方でした
ある時、ぼくがこんな質問をしました。
「和尚さん。お金がない方のお葬式の場合、いくらまでなら供養を受けてくれますか?」
するとこちらのお坊さんはものすごい返答をして下さったのです。
「お気持ちで、いいですよ」
「いやいや、お気持ちとは言っても、最低限ってあるでしょう?」
「いやいや、本当に、お気持ちでいいですよ」
「じゃあ、例えば、千円でも?」
「はい。どうしてもお金がないのであれば、千円でも構いません」
…と、いつもの調子で、真顔で、言うんです。これには驚きました
そんなのでお寺が維持できるのだろうか。そんなことを思っていると、こちらのお坊さんは次のように仰ってました。
「ありがたいことに、うちの檀家さんは葬儀や法事の時以外でも、ご供養としてお金を持って来て下さる。それでお寺は充分維持できるんです」
日ごろのお檀家さんとの良好なつながりがお寺を支えているのです。きっとふだんから「このお寺にはお布施をしたい」と思わせるふるまいをされているのでしょう。まさにお坊さんの鏡です
お金だけがお布施じゃない
別のお坊さんは、お通夜のあとの法話で、故人さまの思い出について語っていました
「Bさんはね、いつもお寺に来ては草むしりをしてくれていたんです。お寺としても本当にありがたいですし、Bさんのきれいな心に、いつもこちらも大事なことを教わっていました。お寺への貢献に対しての感謝や、Bさんの心の中に宿る仏性(仏さまになるための資質)への敬意として、お寺から院号戒名をお授けいたしました」
戒名のランクというのは、お布施の金額だけで決まるのではないんです。また、お布施はお金を納めるだけじゃありません。Bさんのように、自分の時間をだれかへの奉仕に費やすことも、お布施の一種なんです
じつはお寺って本当にすばらしい場所で、お坊さんって本当にすばらしい存在(本当は)。資本主義の現代の価値観にとらわれない、大きくて、やさしい仏教思想がベースにある世界なんです
だから、決してお寺が悪いわけじゃなくて、いいお坊さんもいれば悪いお坊さんもいる、引っ付きたいお寺もあれば、離れたいお寺もある、ということを、皆さんにも知っておいてもらいたいです。
本日も最後までお読み頂き誠にありがとうございました
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葬儀のかなふく 株式会社神奈川福祉葬祭
代表取締役 鈴木隆