心と体がリンクしない。悲しめないのはいけないこと?
好きな歌手は中島みゆき
皆様こんにちは かなふく鈴木です
大切な故人さまとの最期の別れであるお葬式で「悲しめない」「涙が出ない」と戸惑う方って、案外多いのではないかと思います。
もちろん、そうした感情って、誰彼に話すものではありませんから、統計データがあるわけではないのですが、毎日いろいろなお葬式のお手伝いをしていて、さまざまな方の表情を見ていると、そのように感じることが多々あります
今日は、悲しめないことに戸惑うあなたに「それでも大丈夫ですよ」というメッセージを贈ります。
悲しめない。涙が出ない。
人間の感情って本当に多様で、なかなか一括りにできるものじゃありません
でも、この社会のさまざまな場面で、ぼくたちは自分自身の感情を社会規範に寄せることを求められます。
結婚式では喜ばしく、お葬式では悲しく、その他にもデモや抗議運動では怒りを、運動会や会社のイベントなどでは楽しく過ごすことを求められます
結婚式を例にとると、「どうしてあの人と結婚しちゃったんだろう」とわが子の結婚を憂う人もいるでしょうし、「どうして私は結婚できないんだろう」と同僚の結婚を妬む人もいるでしょう。
お葬式も例外ではありません。故人さまとの関係性から素直に悲しめないという方もいるでしょうし、死別というなかなか経験することのないことに対して感情がどう反応していいか分からずにいる方も少なくないのです
グリーフ(死別の悲しみ)のプロセスは、「ショック・茫然自失」「否認・パニック」「怒り」「孤独・諦め」「立ち直り」という段階を踏むと言われています。ひと言に「悲しみ」と表現する中にも、これだけのフェーズがあるわけで、ショック状態やパニック状態にある方は、そもそも心がボーっとしてしまう、涙が出ないという状況になりがちです。
わたしの敵はわたしです
お葬式から少しだけ話が逸れますが、社会規範と個人の感情がうまくリンクしない感覚を見事に表現しているのが、中島みゆきさんの『ファイト』の歌詞です
私、本当は目撃したんです
昨日電車の駅、階段で
ころがり落ちた子供と
つきとばした女のうす笑い
私、驚いてしまって
助けもせず叫びもしなかった
ただ恐くて逃げました
私の敵は 私です
社会規範はここで、子どもを助け、突き飛ばした女を掴まえることを求めます。でも、頭ではわかっていても、心が、身体が、うまく動かず、その場から逃げ出してしまう。
「その感じ、とっても共感できる!」という方、少なくないのではないでしょうか
でも、たとえその場から逃げ去っても、自分の中の苦い記憶は自分の中に定着してしまいます。「逃げてしまった」という現実からは逃げられず、やがて「私の敵は私です」と自らを責めてしまうことにつながります
でもこれって、自己意識が自分自身に向いていて、ある意味とても健全な反応だと思うんです
天才的な文才を持つ中島みゆきさんは、ここで「敵」ということばを用いましたが、でもそれは、乗り越えがたい現実、受け入れがたい自分というものを、乗り越えようと、受け入れようと、必死に闘っていることに他なりません。
「悲しまなきゃ」「泣かなきゃ」と、社会規範と異なる自身の感情に戸惑うあなた。本当にそのままでいいんです。大丈夫です。人の感情って、本当に一括りにできません。現実を受け入れられる人。悲しみが増幅されてすべてを否定する人、頭がボーっとして現実を受け入れられない人、冷静に俯瞰している人、本当にさまざまなんです
「悲しめない」「泣けない」
「悲しまなきゃ」「泣かなきゃ」
「悲しい」「涙が出る」
…どのフェーズにいたとしても、その時の素直なあなたのまま、お葬式に臨めれば、それでいいと思います
お葬式という儀式が必要な理由
ぼくたちは、たくさんの人たちと手を取り合って社会を形成して、その中で生きています。十人十色で、みんながバラバラなことを考えていたら、世の中が成り立ちません。
だからこそ、お葬式と言った儀式、つまり社会規範を可視化する儀式が必要となるんです
「お葬式では、悲しく、慎ましく、故人さまを送ろうね」
心の中ではいろんな人がいろんなことを感じ、考えていますが、表面的にはこういう形でお葬式をしようねという共通理解が、故人さまやご遺族さまのためになるんです。
ある時急に、あふれる涙
その方の死別をどのように受け入れるかは、本当に人によってさまざまです
よくお客様から聞かれる声に、
「お葬式ではぜんぜん泣けなかったのに、ある時急に悲しくなって、涙が止まらなくなった」
…というものがあります。非現実的なお葬式を終えて、日常を取り戻しつつある中で、故人さまの死別が心と体の両面で受け入れられた時に、急な悲しみが襲い、涙が止まらなくなるのですね。
感情に規範はない。ありのままで大丈夫
「私は冷たい人間なのかな?」と自身を責めることはありません。いつか悲しめる日が来るかもしれませんし、あるいはあなた自身が悲しみという感情表現が苦手な性質なのかもしれません。
何度も言いますが、感情に規範はありません。あなたの性質、故人さまとの関係性などによって、死別への反応は実にさまざまです。
あなたが心の中で何を感じていようとも、あなたが来てくれたこと、あなたが想いを手向けてくれたことを表現するだけで、故人さまも、ご遺族さまも、そのことをありがたく受け止めてくれているはずです
あなたの敵はあなたなのかもしれません。でも、まわりはだれも、あなたを敵などとは思っていませんからね
本日も最後までお読み頂き誠にありがとうございました
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代表取締役 鈴木隆