地獄ってどんな場所?みうらじゅんさんの『マイ仏教』から考える
好きなことばは「自分なくし」。
皆様こんにちは、かなふく鈴木です
ここ最近読んだ本でものすごくおもしろかったのが、みうらじゅんさんの『マイ仏教』です。
京都に生まれ、お寺がたくさんある街で育ったみうらさん。
おじいさんに遺跡の発掘現場に連れていかれ、仏教系の学校に進学し、そしていまや仏像好き、仏教好きを公言し、『見仏記』『アウトドア般若心経』などの著作も刊行しているみうらさん自身の仏教遍歴が詰まった一冊です
本当に、おかしくて、おもしろくて、でもきちんと仏教のだいじなところを押さえているこの本から、「地獄」について考えてみたいと思います。
地獄ってどんな場所?
「地獄 」
子どものころから聞かされた死後のバッドな場所ですよね。いわばディストピア
ちなみにグッドなユートピアが「天国」と呼ばれ、だれもが死んだら天国に行きたいと願うものです。
「いいことしたら天国に行けるよ」という反面、「悪いことしたら地獄に堕ちて、鬼に舌を抜かれ、ぐつぐつと熱いマグマに叩き落されて、身体中に針を串刺しにされて…」と、地獄の描写の方がえげつないですよね。
地獄は古代インドの「六道輪廻」の考え方に基づいていて、6つある転生先の一番最悪な場所が地獄。生前の行いによって行き先の決まる地獄ですが、この生前の行いというのが実に細かく定められているのがおもしろい。
羊やロバと性交した者が堕ちる地獄。嘘をついて他人の事業を失敗させた者が堕ちる地獄。象に酒を飲ませて暴れさせた者が堕ちる地獄。なんだか古代のインド人の生活が垣間見えてきますよね。
これが現代の日本だったら、ヘイトスピーチを拡散した者が堕ちる地獄、選挙ポスターに落書きした者が堕ちる地獄、飲酒運転をして交通事故を起こしたものが堕ちる地獄などが、あるのかもしれませんね。
源信に始まる日本の地獄観
日本における「地獄観」を決定させたと言われる人がいます。
みうらじゅんさんも本の中で触れていた、平安時代のお坊さん、源信(げんしん)さんという方です
この方の書かれた『往生要集』という本が、日本人の心の奥底に沁み込んでいる地獄観の始まりなのだそうです。
『往生要集』の冒頭には、それはそれはえげつない地獄の光景が描写されています。たとえばこんな感じ…。
この地獄には、 鉄山が多くあって、 それぞれ二つずつ向かいあっている。 牛や馬の頭をした多くの地獄の鬼が、 手に手に責め道具を持って、 罪人を追いたてて山の間に入らせる。 この時、 両方の山が罪人に迫ってきて押し合わせると、 罪人の身体は砕け折れ、 血は流れて地面に満ちる。 あるいは鉄山があって空から落ちて罪人を打つと、 砕けてちょうど沙のような有様となる。 あるいは罪人を石の上に置き、 岩で罪人を押しつぶし、 あるいは鉄の臼に入れ、 鉄の杵で擣つく。 極めて恐ろしい地獄の鬼や、 熱鉄の獅子・虎・狼などのいろいろな獣や烏・鷲などの鳥が、 先を争ってやって来て罪人を噛み食くらう。
こんな恐ろしい地獄が他にもたくさんあるんです。『往生要集』ではのっけから地獄のオンパレード。残酷描写をことこまかに描くことで、「そんなとこヤダよー」「行きたくないよー」という気持ちにさせるのです。
『往生要集』は往生するための“まとめサイト”
地獄の描写がリアルに恐怖を与えるということは、それだけ『往生要集』が文学性にすぐれていたことをも意味します
でも、源信が人々を恐怖のあまり奈落の底に叩き落すために『往生要集』をまとめたのかというと、そうではありません。
この本のタイトル『往生要集』をよーく見てみましょう
つまり、極楽浄土に往生するためにすべき大事なこと(=要)を集めましたよ、ということなんです
いまでも本屋さんにいけば、『絶対に幸せになれる!今日から毎日すべき50の方法』とか、『小顔メイクでモテギャルに変身!絶対しておくべきたった3つのテクニック』とか、あるじゃないですか。あれと同じですよね
『往生要集』は、地獄ではなく極楽浄土に往生するためのまとめサイトみたいなものです。現代風に言うならば、『地獄なんてヤダ!絶対に極楽浄土に往生するためのたったひとつの方法』とでも訳せそうですね。
全10章で構成されている『往生要集』ですが、地獄の描写は第1章に多く割かれ、2章以降は、極楽のすばらしさ、極楽に行くための念仏の大切さ、方法論、功徳などが説かれているのです。
「地獄ブーム」地獄があるから極楽が際立つ
源信さんが生きた時代平安中期は「末法の世」と呼ばれ、「この世は終わりだ~」という終末思想が蔓延している社会でした。
天災、飢饉、旱魃などの自然災害に加え、武家の台頭や貴族の権力争いなど、なにかと社会不安が増大する時期だったのです。
今自分たちが生きている社会に安心できない、それはつまり、この世界がそのまま地獄であることを意味します
だからこそ、死後の地獄という場所がいかに恐ろしいかを伝え、乱世であっても正しい生き方の実践を説き、それが当時の貴族や民衆たちに多大な影響を与えたのです。
現代を生きるわたしたちは、仏教が説く地獄よりもさらに残酷な世界をマンガやアニメやゲームの世界で受容しています。
つまり、死後の地獄よりも、いまの生活や身の回りにあふれているコンテンツの方を、ぼくたちはよりリアルに恐れています。
そういう意味で、みうらさんは「地獄ブーム」を浸透させるべきだと主張してます。地獄の恐ろしさがリアルに感じられると、いまを善く生きようとするのではないか、ということです。
地獄があるから極楽が際立つ。地獄に堕ちたくないからいまを善く生きる。
そんなことをおもしろおかしく説くみうらじゅんさんの『マイ仏教』。本当におすすめですよ
本日も最後までお読み頂き誠にありがとうございました 。
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