戒名って、自分で考えてもいいの?
皆様こんにちは かなふく鈴木です。
お葬式の時に必ず話題になるのが「戒名」。ここ最近はどちらかと言うと、悪役として語られがちです
「戒名なんて、何の意味があるの?」
「たった数文字でウン十万円だなんて、ぼったくりだ」
「だったら自分で戒名をつけたらいいじゃん」
たしかにそう言いたくなる気持ちも分かります。でも、戒名にはそれなりの意味と価値みたいなものがあるとぼくは思っています
ということでこの記事では、「戒名を自分でつけてもいいのか」という問いに対するぼくなりの答えを軸に、戒名の本質的な価値について考えてみたいと思います。
「戒名は亡くなった人への名前」じゃない
よく「戒名って亡くなった人につける名前ですよね」と言われるのですが、これは厳密には間違いです
戒名とは、正式には仏弟子に授けられる名前のことです。ちなみに、戒名の「戒」とは、仏教者が守るべき戒律(決まりごと)のことで、これとともに新たな名前が授けられるのです。
分かりやすい例が、瀬戸内寂聴さん。もともと瀬戸内晴美という名前でしたが、出家をしたことで寂聴という戒名を授かったのです。
日本の、特に伝統芸能や武道などには名づけの文化がありますよね。茶道や華道にも雅号がありますし、歌舞伎や落語などにも襲名があります。お相撲さんだって弟子入りするに合わせて四股名(しこな)をもらいます。
こうした名前には、過去の自分を捨て去って、新たな道を進んでいく自分を象徴する意味があります。そして新たな名前のほとんどは、師匠から授かります。仏教の戒名の場合も、必ず師匠となる僧侶から弟子に対して戒名が授けられます。
戒名を自分で名付けてもいいの?
となると、戒名って自分でつけてもいいのでしょうか?
結論から言うと、「自分でつけても構わないけれど、それはもはや戒名ではない」となります
自分で名付けた戒名って、ただ数文字の漢字を羅列しているにすぎず、そこに意味や意義を吹き込むのは、僧侶の方がいてこそなんですよね。
もしも生前の名前と死後の名前を分けてつけたいのなら、なにも戒名っぽくしなくても、まったく違う名前にしてもいいと思います。
ぼくも、とあるお葬式で「自分で戒名を考えた。その上でお坊さんを紹介してもらえるか」という依頼をいただいたことがあります。
理解のあるお坊さんに来てもらい、葬儀は滞りなく行われたのですが、帰り際にお坊さんはぼくにぼそっと話してくれました。
「正直、知っている人が見たら笑うかもしれませんよ」
要は、戦国武将や著名な方が授かるような、めちゃくちゃ仰々しい戒名だったわけです
戒名を自分で名付けたいというのは、「わたしはこう思われたい」という欲や自我が丸見えになっちゃうんですよね。ここは充分に気を付けたいところです。それは、意識が内側(自身の内面、心、魂)に向かっているのではなく、外側(自身の表層、他人の目、社会的評価)に向いていることの証です。
しかも、あえて戒名っぽくしているところを思うと、形式にばかりこだわってしまって、中身のないものに陥りかねません
ひとりの方が亡くなって、命について考える機会です。戒名の体裁よりも、その奥深くにある本質に向き合いたいものですね
立川談志や山田風太郎の場合
自ら戒名を名付けるあっぱれな人に、立川談志と山田風太郎がいます。
このふたりはもう自我を通り越して、それがサービス精神あふれるパフォーマンスとなっています。立川談志は落語家として、山田風太郎は作家として一流のエンターテイナーでしたからね
ちなみにおふたりの戒名は次のようなものです。
<立川談志>
立川雲黒斎家元勝手居士
<山田風太郎>
風々院風々風々居士
ここまで酔狂な戒名をつけるとなると、もう文句の言いようがないですよね
思わずこちらもニンマリとしてしまう
自身の死後の成仏とかどうでもよく、俗世の人たちをいかに面白おかしく笑わせられるか。それはある意味、「我欲」に捉われるどころか「利他」の精神だとすら言えるかも知れませんね。
あの世の名前があることの意味
最近は、戒名と言えば亡くなった時に授かるものとして定着しています
これは、禅宗で始まった葬儀の形式である「没後作僧」に由来します。文字通り「亡くなったあとに僧侶を作る」、つまり死者を仏弟子にして送り出すということです。
ここには、亡くなったあともきっと故人はあの世を生きているという目に見えない世界への信仰がありますよね。「向こうの世界で修行をして、仏に成れるよう頑張っているんだ」という物語が、遺された家族の心を支えてくれます。
その物語をより信じられるように、戒名があります。この世の世界とあの世の世界での名前を分けるのには、そうした意味があります。
加えて、複数の文字で作られる戒名には、生前の生き様や人柄が反映されています。子や孫は、その文字を見て故人さまのことを思い出せますし、遠い子孫もその文字を見て、「ぼくのご先祖さまはこんな人だったのかなあ」と想像をめぐらすことができます。
戒名には、その人自身の生きる杖として、遺された家族の心の支えとして、時代を超えた子孫とのつながりのきっかけとしてなど、さまざまな価値と役割があるんです。
本日も最後までお読み頂き誠にありがとうございました
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